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はじめに(佐藤 義夫)


時代の風にうまく乗ろうと考えている<あなた>へ

 「小規模・多機能」という妖怪が街をさまよっている。ネコも杓子も「小規模・多機能」、これこそ時代のトレンドだ。そんな時代の気分を敏感に察知したあなたは、店頭でこの本に巡り会った。この本はそんなあなたのために書かれた本である。あなたが脱サラであるか、福祉施設で報われぬまま営々と働いてきた介護職か、今の商売から業態の転換を考えている人か、あるいは欲望と野望でこりかたまった人か、総じてあなたが“何者”であるか、そんなことは今は問わない。
 あなたは今まじめにデイサービスを始めようと思っている。これまでの既存の介護や福祉のあり方に、心のどこかで疑問を持っている。老人ばかりではなく、低賃金で働く若者たちが食い物にされている現実にどこかで激しい憤りを持っている。自分ならもっとこんなことができる、あんなことができると密かに考えている。そんな志があれば十分だ。
 「小規模・多機能」は一つの「社会的事件」である。なぜならば、この国の福祉が始めて、「利用者のニーズに即して、提供するサービスを自在に変容させていく」というシステムを採用したからである。このことは、これまでの硬直的で既得権にまみれたシステムでは、これからの高齢時代を乗り切れないという危機意識の裏返しに他ならない。「小規模・多機能」という「変容するシステム」は、だから、これまでの政策の体系と微妙に齟齬をきたすのである。
 この本を手にしたあなたは、自ら「小規模・多機能」施設を、まさに「社会的事件」として華麗に立ち上げることになるだろう。あなたが始めるデイサービスは、あなたの直感通りに、地域の住民の好奇心と期待と、そして恐れが向けられることになるだろう。あなたのデイサービスは、いかにルーズで猥雑に見えようとも、この国の介護政策のアイマイさを知っているというその一点において、現下の戦略としては少しもアイマイさはないのであり、人は本能的にこのことを理解し顧客となるのである。
 今日、世に言ういわゆる大手の介護事業者は、すでに、「やってやってやりまくる」体制に入ったと見ていいだろう。資金も組織もないあなたは、ただひたすらホゾをかむしかないのだろうか。いやいやフランチャイズがあるさ、と考えてはいけない。何よりも本書の目的は自らの起業なのである。
 デイサービス起業に関する指南書は多い。しかし、世の中で流布されている口当たりのよい言葉をいくら並べても、「実際に使える」事業戦略にはならないし、あなたに有効な知恵を少しも授けてはくれない。本書は、具体的な、そして戦略的な「ハウ・トウ」をあなたに示すものだ。あなたが起業し、あなたが始めるデイサービスに、質の高いハードとソフトを提供するために、『あなたが始めるデイサービス』の続編として作られたものである。
 この本の制作に当たって、いろいろな方たちのご協力、ご助力、ご教示をいただいた。
 まず、出版のきっかけともなった「宅老所・デイサービス」起業支援講座を開設していただいた聖学院大学生涯学習センターの皆様に心からお礼を申し上げたい。
 そして、多忙にもかかわらず、分担執筆いただいた阿部仁史、安西順子、伊藤英樹、岡田百合子、小川泰子、鴨田泰英、神向文明、木村友秀、近山恵子、鶴巻等、藤本真二、横田克巳、横田一彦の各氏に心から感謝したい。


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